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自己破産とは?
人であれ企業であれ、破産というのはできるだけ避けたいものです。
とはいえ、抱えている借金によっては破産せざるを得ないときもあります。
人が行う破産は自己破産になります。
抱えていた借金を清算する唯一の手段となっています。
そう聞くとありがたい制度のように思えますが本当にそうなのでしょうか。
実際に自己破産をするには面倒な手続きがあったり、借金の内容などに条件があったりと面倒なところも意外とあったりします。
ここでは、最後の手段として用いられる自己破産について説明していきます。
借金がなくなる自己破産
自己破産とは、債務者が債権者に対して破産の申立てを行い、借金をゼロにしてもらうことです。
申立をするときは裁判所の力を借りて行うこととなります。
借金をゼロにできるのが自己破産の魅力ですが、簡単には認可されません。
借金は「借りたものは必ず返す」ことが前提だからです。
借りたものは(利息を付けて)必ず返すことを前提にして貸金業者は仕事を行っています。
もしも、簡単に自己破産を認めてしまうと「借りたものを必ず返す」という前提が崩れてしまい、貸金業者の商売そのものが成り立たなくなってしまいます。
債権者にも生活があるため、彼らの活動もまた保証しなければいけません。
そのため、債権者を守るためにも自己破産は簡単に行えないようになっています。
自己破産するのに必要な書類
自己破産は、厳重に審査を行ったうえで実施されることから必要書類の数もまた膨大です。
自己破産手続きに必要な書類
- 破産手続き開始・免責許可申立書
- 陳述書
- 住民票・戸籍謄本
- 給与などが分かる資料
- 預金通帳のコピー
- 源泉徴収票・課税(非課税)証明書
- 居住地がわかる資料
- 資産関係がわかる資料
その他、事情を説明する上で必要になる資料(生活保護受給証明書、診断書やお薬手帳)
用意するものとしては、「破産手続き開始・免責許可申立書」「住民票」「財産目録」などを用意する必要があり、用意する書類は20枚以上となる場合も少なくありません。
20枚以上もの書類を用意するのはもちろんのこと、中身もしっかりと記載されている必要があります。
提出した書類は一枚一枚厳重にチェックされ、不備があるとやり直しとなり再提出を命じられます。
やり直しが発生すると、その都度書類を書き直して裁判所に足を運んだりと、かなり大変な作業になります。
このように、自己破産の準備はかなり大変です。
そのため、自己破産をするときは弁護士などの専門家にお願いした方が効率よく進められます。
もちろんですが、弁護士に書類作成を依頼するときは資産状況や借金の残高などを事細かに聞かれます。
「借金の状況を人に話したくない」と考えてしまうこともありますが、正確に答えないと正確な書類が作れずに自己破産できなくなることもありますので、聞かれたことは正直に答えるようにしましょう。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリット
自己破産のメリットは「収入が無い方でも利用できる」ことです。
任意整理や個人再生の場合は、借金を必ず返済していくことが前提となるため、安定した収入がないと利用できません。
ですが、自己破産は借金そのものがなくなるため、一度適用されれば返済の義務から解放されます。
そのため、失業した人など安定した収入がない人であっても利用できるようになっています。
自己破産のデメリット
自己破産は抱えていた借金を消滅させてくれますが、その分条件が厳しくなりますので気をつけてください。
実際に自己破産をするときは、債務者の振る舞いや借金をした理由によっては認められないことがあります。
例えば、損害賠償や慰謝料などによって作られた借金です。
こうした借金は被害者がいることから必ず返済しないといけません。
そのため自己破産の対象からは除外されています。
ギャンブルについても同様です。
ギャンブルで作ってしまった借金は自己破産できず、自分で返済していかなければいけません。
ただし、ギャンブルで自己破産できないのは原則であり、債務者が誠意ある対応をすれば認められることもあります。
また、自己破産が認められているものであっても、債務者の振る舞い次第では認められないこともあるので気をつけてください。
例えば、没収されるような資産を故意に隠したり、ローンで買った商品を完済前に売却してお金をえたりするような行為が挙げられます。
そうした行為をすると裁判所などから「誠意ある対応が見られない」とみなされ自己破産の申し立てが却下されてしまいます。
没収される財産について
資産の没収と聞いて、そのようなシーンを思い浮かべた方も多いかもしれません。
(ドラマでそうしたシーンを見たことがある人もいるでしょう。)
では、実際に自己破産で自分の財産が没収されるときも、そうしたドラマの1シーンのようなものを体験するのでしょうか。
実はそんなことはありません。
現実に行われる取立て行為は法律によって定められており、債務者の資産はある程度保証されています。
取り立てによって没収されるのは、基本的に20万円以上の価値があるものや100万円以上の現金だけです。
自宅に高価なつぼや、車などがあった場合はそれらが没収対象となります。
(ただし古い車で資産価値が20万円未満の場合は、採算が取れないことから没収されることはありません。)
逆にいうと99万円までの現金は手元に残ることとなり、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど日常生活で使用する家電も没収されることはありません。
こうした家電は生活には欠かせないものと見なされていることから、没収対象からは除外されているからです。
冷蔵庫に入っている食べ物や衣類についても同様です。
いわゆる衣食住の衣と食にあたるものであり、生活に欠かせないものであることから、没収されずに残ります。
債権者から見た場合、没収対象にならないものは「採算が取れない」ものであることがほとんどです。
自己破産で没収した資産は売却され債権者に分配され渡されます。
そのため、没収されるものが高価なものであるほど、償還される金額が増えることになります。
では、没収対象の中に衣類がある場合はどうなるでしょうか。
一部の服は数十万で売却されるなど高価なものもありますが、ほとんどの服は売っても大した価値はありません。
また、当然ながら売れない服も含まれており、売れなかった服は没収した側で処分いなければいけませんが、処分にも金がかかります。
このように家にあるものがすべて換金できるとは限らず、むしろ処分費用を考えるとマイナスになってしまうものも少なくありません。
そうした事情から没収される財産は20万円以上の価値があるものと定められています。
ギャンブル依存症と自己破産
ギャンブルで作ってしまった借金であっても一応は自己破産できますが、安易に自己破産をしないようにしてください。
特にギャンブル依存症に陥っている場合は、自己破産と同時にギャンブル依存症の治療も行う必要があります。
自己破産は一度行っても7年経過すれば再び行えますが、それはあくまでも法律的な話でしかありません。
自己破産は、借金を清算するタイプゆえに債権者に多大な不利益を被らせてしまいます。
債権者に損を与えてまでも債務者を救おうとするのは「債権者を立ち直らせるため」です。
そうしたことを踏まえて、ギャンブルで自己破産をして、その後またギャンブルで自己破産しようとしたらどうなるでしょうか。
自己破産の為に動いてくれ人たちの行為を無駄にしたことに他なりません。
そのため、法律上は再度自己破産ができたとしても裁判官の心証が悪すぎるゆえに、2回目の自己破産が認められないことすらあります。
ギャンブル依存症に陥っている場合は、借金の整理だけでなく、ギャンブル依存症そのものの治療も必要です。
そのため、ギャンブルによって自己破産をするときは、ギャンブル依存症の治療も必ず行うようにしましょう。
自己破産を理由に解雇させられることはない
こんな話を聞いたことはないでしょうか。
しかし、自己破産したことで会社を辞めさせられることはまずありません。
日本の法律の場合、会社が社員を辞めさせるには「会社の名誉毀損されたり、悪意を持って実施した行為によって損失を与えた場合」などに限られています。
自己破産の場合は債権者に迷惑をかけますが、会社に迷惑をかけることはありません。
また、自己破産したことを周囲に知られたとしても、そのことが直接的に会社に迷惑や損失をかけることも原則としてありません。
そのため、自己破産をしたとしても会社員はそのまま会社員として在籍つけられることになります。
(自己破産した人が会社にいると、嫌がらせの電話をかけてくるかもしれませんが、それはいやがらせ行為をした人が悪いのであって、自己破産した人が悪いことにはなりません。)
ただし、一部の職業は自己破産をすると、一時的に仕事ができなくなったり解任されたりしますので気をつけてください。
具体的には、弁護士や司法書士などの士業は自己破産中であれば一時的に仕事が出来なくなり、団体企業の役員や監査役、委員会のメンバーや委員長をしている人の場合は自己破産をすると解任されます。
なお、弁護士や司法書士などは自己破産中の場合は弁護士としての活動はできませんが、自己破産が実施されて一定期間以上経過し、復権手続きを行って認可されればば再び弁護士司法書士として仕事が行えます。
まとめ
自己破産はもともと事業で失敗し多額の借金を抱えた人向けに誕生した制度です。
そのため、破産理由にギャンブルが認められないこととなっています。
一応、反省をすればギャンブルの借金も適用できる場合はありますが、あくまでも可能性の話なので気を付けてください。
また、自己破産はすることよりも、した後のほうが大切です。
抱えていたものが一気になくなるので気が緩み、大量のお金を消費してしまうことがあります。
自己破産は1度行うとしばらく使えないので、利用後の振る舞いはよく考えておく必要があります。